BOOKS:「第一阿房列車」内田百閒
鉄オタが高じて、借金をしてまで列車に乗るために旅をするエッセイ。
自分の価値観もわがままも少し引いたところからの視点で、だからと言って冷めているわけでもない。素敵な偏屈じいさんが、若くてぼんやりしたお弟子さんを連れて、繰り広げる珍道中。
列車が好きすぎて、乗ってる時が一番ご機嫌で、宿についたら不満が多いのも愛嬌があっていい。あと、ちょっとした風景の描写がきらきら光っている。
基本はエッセイなんだけど、ところどころ物語というか不思議な空気感が漂う。狐が人を化かすとか、列車の中で酔っぱらって現実感がすうっとなくなっていく感じとか。普通の文章なのに、そこだけものすごい浮遊感がある。
あと、私も国内旅行では、前もって色々と調べて計画を立てるよりは、現地でその日の天気や気分で行動するのが好きなんだけど、そうすると待ち時間が出来たりと、あんまり効率的に動けないことも多い。
なので、この本の「列車の待ち合わせで2時間もあって、座ってるのもなんだけど、駅前にはなんにもないし、この手持無沙汰な時間をどうしようか」みたいなシーンにすごく共感した。なんかこう、旅行のダメな部分を楽しむことなく(楽しめませんよ)、ああ、もう・・・って受け入れてるのが、そうだよなあ、って感じ。
第一から第三まで読了してしまって、寂しい。これから、この方の全集を読みます。