BOOKS:「相田家のグッドバイ」 森博嗣

本の感想を書くのに、作者名を書かないのはだめだよね。

相田家のグッドバイ

相田家のグッドバイ

これも図書館で借りたもの。AmazonではKindle版もあるようです。

 

表紙の通り、家族の物語なんだけど、よくある「再生」とか「絆」ではなく

家族史を描きながら、「自分にとって家族(とくに両親)って何なのか」を

見つめ直して再構築する話。

Amazonでのレビューを見ると、どうも筆者本人の家族をモデルとしている

らしい。ただ、自伝的小説とは言ってないので、具体的な描写に

ついては創作も多そう。父親や母親の人としての偏りや、印象的な

エピソードは、実際にあったことなのかもしれない。

 

どこの家庭でも「困った親戚」「家族の変わった癖」「他人には言いにくい何か」

があるものだと思う。どんなに上手くいってても、仲が良くても

大人になるとうっすらと「これって実は変なんじゃないか・・・」みたいなこと。

でも、変なことは事実としてあっても、それと自分自身との距離をはかって

相対化して一般化して、その事実を新たに受け入れる、ということまで

やる人はなかなか少ない。一番近くにある家族を遠くから見るのって

なかなかしんどいことじゃないかなと思う。

この本の主人公の紀彦は、日常的、あるいは非日常的なタスクを

淡々とこなしながらも、そういうことを考え続けていく。

 

静かな小説だけど、無駄な要素がなくて、書いてあるひとつひとつが

相田家と主人公を作ってるって感じがする。これ以上でも以下でもない感じ。